神戸南京町

このドラマは、今でもある食パンのおいしいフロインドリーブの創始者であるドイツパン職人をモデルにしていた。私の父は内科医で、そのパン職人の最期を看取った。
この朝ドラマがきっかけで舞台となった神戸市の北野町山本通にある異人館街が脚光を浴びることになり、「異人館ブーム」が起きた。風見鶏の館は、今も人気の観光スポットであり、近くにジャズトランペッターとサックスを持った男性の像があり、観光客の記念写真のお供で大忙しである。私自身は、子どもの頃から風見鶏の館の外観を眺め続けてきたが、実はなかに入ったことがない。機会があれば内部の見学もしたいものである。
子ども時代、フロインドリーブの店が自宅から徒歩五分ぐらいのところにあり、よくお使いに行かされた。特徴的なのはパンもお菓子もやや湿っていて、自宅に住み込んでいた医療事務員がそれを腐っていると勘違いして文句を言って、逆に怒られたりした。どうも意図的に湿らせてしっとり感を出していた模様である。これ一つとっても、日本パンと異なるドイツパンの特徴が表れているようでおもしろい。
私は子どもの頃から時々南京町に寄ったが、最初はラーメンやチャーハンを食べていたのが、次第に山西省の刀削麺のような変わった中華料理を食べ、しまいにはロクツボヤ(ベトナム料理)やラジャ(インド料理)のような中国以外の料理を食べるようになった。今でも飽きずに食べているのは老祥記の豚まん(天津包子)である。最近職場の近くの元町商店街5丁目に支店ができたので、たまに職員一同、仕事の合間に豚まんを食べることがある。饅頭の中身は、豚バラ肉のミンチとネギを醤油で味付けしたものだが、この中身を包む皮が妙に美味く、飽きが来ない味つけになっている。
私は横浜中華街へ二度行ったことがあるが、正直言って規模の大きさは、神戸南京町より上であろう。しかし南京町には、老祥記に代表されるようなこじんまりとした、それでいて個性の強い店が多い感じがする。